恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

野毛はクサい。


パソコンをボカスカ打ちやすくするチェアが欲しいなと思い、横浜高島町の駅で降りて、野毛ちかくの中古オフィス家具屋さんに行ってみたんだけど。
ただの倉庫に、所狭しと机やらキャビネットやロッカーやらホワイトボードやらが雑然と置かれているだけで、色気もへったくれもペッティングすらあったもんじゃないし、店員もどこにもいやしない。
で、2階に椅子展示場があるのでお気軽にどうぞと貼り紙されていたので、お気楽大使を気取りつつ2階へ行ってみた。2階も1階と大差なく、やはり店員の影はどこにも見当たらず、ひたすら椅子が雑多に雁首そろえて並んでるだけであり、さながら椅子の煉獄である。
よくよく見ると、ハーマンミラーアーロンチェアだとか、バロンのバロンなバロンすぎるチェアだとか、高級チェアもあるっちゃあるんだが、いかんせん、ざっかけない売り場であるため、どの椅子も魅力的な商品に見えてこず、すべて夢の島がお似合いのようでもあり、まるで物欲がわいてこないので、早々に引き揚げた。
そのあと野毛のウインズ周辺を散策していたら、腹が超人ペコちゃんなものだから、適当に通りすがりの大衆的な天ぷら屋に入ってみたら、店内に入った瞬間、饐えたニオイが鼻腔をつらぬき、物乞いの姿が脳裏をよぎった。
とはいえ全身が店に入ってしまったので今さら引き返すわけにもいかず、800円の天丼を頼んで待っていたら、鼻というやつの適応性バンザイ、いつしか物乞いの姿は脳裏の路地で見失った。
天丼が来た、食べた、支払った、出た。

腹ごしらえが済んだところで、近くにある野毛山動物園へ行ってみた。
ところで私はどうにも動物園というのが昔から好きではなく、動物園のなにがダメかといえば、とにかくあのケモノ臭がいかんともしがたく苦手だ。動物なのだからケモノのニオイがあるのは妥当、ましてや動物園とはケモノが蝟集させられている場所なのだから、ケモノのオイニー、つまりケモニーがあって当然、かくいう私だって風呂に入らないことしばしば、ふだんから腐臭を漂わせてるくせに、ケモノを忌避するのは同族のよしみによる嫌悪かとも思うが、そこはそれ、いくつになっても自分は可愛いものである。
とまれ、なぜケモニー嫌いの私が動物園に行ったのかとなれば、要するに私が吝嗇だからである。野毛山動物園はロハなのだ。金を払ってまでクサいものどもを嗅ぎたくはないが、無代なら話は大いなるマンション、セザールに別だ。

レッサーパンダツキノワグマ、ライオン、トラ、キリン、ワニ、アグー、隻腕のジャガーなんてのもいた。
無料とはいえ掛かる火の粉は避けるに越したことないので、できるだけケモノどもの風上に立ち、人よりはるかに下層であるケモノどもを眺めるようにしていたけど、人は自然に勝てぬ、すぐさま風が逆より吹けば、ケモニーに包まれて正直マジファッキン吐きそうよ。
キリンなんぞもクッセークッセークッセーなーと息を止めながら見やりつつ、その横にフラミンゴたちがいたのでそそくさ寄ってみれば、フラミンゴどももやはりクサい。なぜだかフラミンゴたち、大層な人気で、周囲は黒山と化した老人どもの人だかり、フラミンゴはクサいし、死が程なく近いのだろう、老人どもはさりげなく死臭を振りまき、ここは地獄か冥界か。フラミンゴと老人はクサい。辟易して帰途についた。
帰りの電車では運よく座れたものの、横にキチガイが座っていた。
電車とキチガイの相性の良さについては、いずれ別の機会に語らなければなるまい。