恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

まだそこにある夏。

監督ダリオ・アルジェント、主演エイドリアン・ブロディの「ジャーロ」を観た。渋谷はシアターNで。

ところで。
わたしの部屋は三階建てマンションの三階にある。エレベーターなどという素敵なものはない。なので。部屋にたどりつく手段は階段だ。その階段の、一階から二階へとのぼる中途、踊り場をすぎて四段あがったところ。そこに。
蝉の亡き骸がふたつ、仲よく並んでいる。
夏が終わりゆく前からずっと。
秋というやつは、とうの前にやって来たはずなんだ。でもね。
夏の残骸は今でもしぶとく残されたままだ。
毎朝、社会にでます。
夏の死体を眼下に見ながら。
毎日、世間と戯れます。
夏の死体なんかすっかり忘れて。
毎晩、家路につきます。
夏の死体を視線に認めたらポッケから鍵を。
いつかだれかが夏を片づけてくれるだろうと、いつもこころで祈りながら、いつだって夏に別れを告げている。だけど。
あの四段目に舞い戻れば、いつもと変わらぬ無様な姿で、夏が待ってくれている。だから。
静かに叫んでみせるのだ。
夏はまだ終わっちゃいないんだぞって。