恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

松方弘樹、資本主義を釣る!

「暴力金脈」を観た。
阿佐ヶ谷ラピュタ東映実録路線中毒で。

先週に観た「仁義の墓場」は狂気!キチガイ沙汰!暴力映画!だったけど、「暴力金脈」はバイオレンスおとなしめ。おどけた調子の音楽が多く、全体的にコミカルな雰囲気が漂う。
仁義の墓場」は、阿鼻叫喚・無間地獄の様相をひたすら描き続けるだけの荒唐無稽な物語だった。それに対し、「暴力金脈」は主人公の総会屋が成り上がる軌跡をしっかりと描く。
やりたい放題の物語だった「仁義の墓場」と比べてしまい、物足りない話だなと「暴力金脈」について当初は思っていたけど、時が経つにつれて、すこぶる完成度の高い脚本だったように思う。
総会屋を目指す松方弘樹はきっちり手順を踏んで成長していく。端株を握りしめ企業に押しかけるも、最初は流儀も作法も知らないために企業から相手にされない。軽い挫折。しかしすぐに老いた総会屋から救いの手が差し伸べられる。松方は老師との出会いにより、総会屋の技術を習得していく。総会では周りを圧倒する声量が重要だと教われば、ランニングシャツとステテコ姿で豪雨に向かって発声練習を繰り返す。ひとつひとつミッションをこなしていくことで、成長する主人公。
一方で。老師の死。稼いだ金を暴力団員の梅宮辰夫に上納金として持っていかれてしまう。東京に進出するも大物総会屋の丹波哲郎が大きな壁となって立ちはだかる。などなど、主人公には試練が次々と襲いかかる。
または。池玲子という「女神との遭遇」、それは「誘惑する異性」との出会いでもある。
最後には。若山富三郎丹波哲郎の強敵コンビとの大決戦。彼らに勝つための道具を得るためには、大きな犠牲が伴っていたり。でも結局は松方は負けてしまうんだけど。しかし最後の最後に、空撮された東京の風景をバックにしながら、松方による呪詛の言葉が響く。松方は勝負に負けたが、偉大なトリックスターの位置へと上り詰めたのだ。それは総会屋という職業における最上の到達点ともいえる。よって松方のサクセスストーリーは達成されたのだ。
神話の法則に範を取って作られているハリウッド脚本にも似た、手堅く素晴らしい脚本が「暴力金脈」にはあったように思う。「暴力金脈」は、日本の「ウォール街」であり、日本の「スター・ウォーズ」でもあり、ハリウッドに全然負けてないぜっていうか、「暴力金脈」が1975年で、「ウォール街」は1987年、「スター・ウォーズ」が1977年なのだから、「暴力金脈」のほうが先を走ってたわけで、日本だって全世界を制しているハリウッドの脚本術を作れたはずなのに、なぜできなかったんだろうと思ったりした。
ともかく。池玲子のおっぱいおっぱい。