恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

悪魔に憑かれたレクター博士がバイクでビューン。


「ザ・ライト エクソシストの真実」をみた。豊洲で。
映画の副題から分かる通り、エクソシスムの話なわけで、どうしようもなくキワモノの匂いがプンプン薫る。みるのを避けようかなと思ってたけど、みて正解。おもしろかったです。
死者に今一度だけ在りし日の輝きを取り戻させようとする所作、エンバーミング。西洋の死化粧であるエンバーミングの行程が、映画が始まってすぐ、小気味よいカット割りで映し出される。
映画の題名が「ザ・ライト」なので、正義を意味する「right」かなと思いきや、タイトルは「rite」の綴り。「rite」を辞書で引けば、「厳粛に行われる式;(特に宗教上の)儀式;(特定の)儀式形式, 典礼」とある。エンバーミングも粛々と行われる儀式なわけで、なるほどと合点。同じく儀式であるエクソシスムをみる者に冒頭から予感させていく演出。とっても心憎い。
主人公は、懐疑主義者で無神論者の様子もみせる、司祭崩れの若者。そして主人公の若者を教え導く者として、一流のエクソシストであるアンソニー・ホプキンスが登場。
アンソニー・ホプキンスといえば誰しもが「羊たちの沈黙」のレクター博士を思い浮かべてしまうわけだけど、この映画では私たちの先入観をそのまま利用して、まんまレクター博士の如き、拘束された姿でのアンソニー・ホプキンスが出てくる。レクターのアンソニーは白い拘束衣で登場したけど、エクソシストのアンソニーは黒い司祭服で登場。その対比がとってもおもしろい。
エクソシストのアンソニーが棲んでいる屋敷の中庭にはバイクが置いてある。このバイク、物語には全く関係のない代物だけれども、映画の最後にはアンソニーがいちいち言及して脚光を浴びせてしまう。そこでふと思い出してしまう。アンソニー・ホプキンスとバイクの組み合わせといえば「世界最速のインディアン」であると。
私がアンソニー・ホプキンスについてよく憶えている映画といえば、レクター博士のシリーズと「世界最速のインディアン」ぐらいなので、迂闊に断言はできないけれど。しかし。もしかすると「ザ・ライト」にはアンソニー・ホプキンスフィルモグラフィーが様々な箇所において刻印されているのかもしれない。そうとでも考えないとバイクに脚光を浴びせた理由が全然わからない。シネフィルな人ならば、私が気づかない細部においても、あれがこれでそれはどれでと、すぐに分かってしむまうのかも。羨ましいぞシネフィルめ!
それはそれとして。「ザ・ライト」のアンソニー・ホプキンスの住まいには、猫と蛙がたくさんいる。これが実はあからさますぎる伏線となっていたのだ。悪魔バールの姿は、人間、猫、そしてヒキガエルの顔を持つ。また、バールという名前は「王」を意味するとのこと。ちなみに歴史上で「バールに愛された者」という意味の名前を持つ人物がいるという。その名はハンニバル
「ザ・ライト」はアンソニー・ホプキンスのために作られた映画であることは疑う余地がないわけです。もし疑えば悪魔の虜囚となるのみ。だから疑ってはいけません。