恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

忠義なき戦い。

★「十三人の刺客」。いつもの豊洲で。

深作欣二仁義なき戦い」は原爆のキノコ雲で始まるが、「十三人の刺客」は原爆が落とされる百年前の語りで始まる。
ひたすら画面が暗い。電気のない江戸時代、暗くてなんぼ。日本のノワールは時代劇にあったのだ。役者陣がとにかくいい。松方弘樹の突出ぶりがおもしろい。サンカ役の伊勢谷友介はいつもの拙い演技であるものの、侍を相対化する役なのでこの演技でこそありなのかも。「ヤッターマン」で櫻井翔をうまく料理した甲斐あってか、稲垣吾郎を悪役に据えての猟奇的描写は三池崇史ならでは。稲垣を使ってではないのが残念だが、男色ネタを出したのも素晴らしい。クライマックスの壮大な殺陣では長回しが一回ぐらいあればよかったのにと思う。日本刀がひしめき合う舞台で伊原剛志が行う殺陣なんぞは真横に据えたカメラで長回しをやればさぞかし様になったのになぁ。ともあれケッサクであること間違いなし。

★「TSUNAMI -ツナミ-」を観た。特にAKB48のファンではないので新宿はミラノの字幕で。

デイ・アフター・トゥモロー」や「2012」と画がかぶるものの、かなりの力作。ただ、主要な役柄がもっと死んでもいいと思う。天災は幸不幸を問わずに等しく人の命をさらわなければ。ワイヤーで吹き飛ばされる人体の映像は興奮。

★「ミックマック」を恵比寿ガーデンシネマで。

相変わらずのジャン=ピエール・ジュネなセピア色の映像の応酬。アメリカ映画が星条旗をこれでもかと映し出すのを思わせるかのように、冒頭でいきなりフランス国旗が出てくる。その後、地雷撤去に従事していた軍人が死ぬ。なるほど国旗の使い方は皮肉であろう。死の商人のオフィスにはフランス大統領サルコジの写真。これまた皮肉。
それにしても。この映画はどこまでが現実の出来事なのか。ビデオ店でハワード・ホークス三つ数えろ」を鑑賞している主人公は、店外の銃撃に巻き込まれて頭部を撃たれる。そして「三つ数えろ」の画面にカメラが近づいていくと、古式ゆかしいタッチで「ミックマック」のクレジットが流れる。「ミックマック」という映画は、死ぬ間際の主人公が観るひとときの夢(映画)ではないのか。その証拠に、主人公が老人のバイクに2ケツでまたがるショット。その背景には、我々の観ているバイクが走る映像そのままに「Micmacs A Tire-Larigot」の看板があるではないか。また、廃品回収をした主人公が車を走らせているショット。ここでも背景には「Micmacs A Tire-Larigot」の看板。そして誰もが見逃さないであろう、終盤に自動車が川岸の看板に突っ込んだとき、その看板はやはり「Micmacs A Tire-Larigot」。
現実のフランス極右政党を声高に非難せず、遊び心でもってして現実に楔を打たんとすジュネの遊び心。遊び心こそが世界に平和をもたらすのだ。