恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

すごく…現実です…

シュルレアリスム展―パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による―」を観ました。国立新美術館で。

オブジェクトが叛乱、いやさ氾濫してた。
★いちばん好きなのはエルンスト「最後の森」

展覧会の作品はどいつもこいつも素晴らしいものばかりだったけど、「最後の森」には心の底より魅入ってしまった。青銅色に鬱蒼とする人工的自然物な森。自然の中に在る無機的な円環がとっても美しい。『ファブリ世界名画集〈58〉マックス・エルンスト』における澁澤龍彦の解説によると、円環とはユング派の心理学者が語るように

偶然の混沌に対抗する無意識の衝動の現れであり、それ自身で充足した円環という心理的全体性の象徴によって、自然の無秩序を統一し、均衡を求めようとする衝動の現れ

なんだとか。「最後の森」は、森の最後の姿であると同時に始まりの姿でもあると言えそう。自らの尾を咬むことで円環と為したウロボロス的な循環が「最後の森」に視えてくる。全体的に昏い風景の画とはいえども、円環の周囲には目眩い輝きが広がっており、冥さの中に未来への光明すら感じさせる不思議な画といえる。
そのほか、気に入った作品を順不同で。
★フランシス・ピカビア「仔牛の崇拝」

共産主義プロパガンダポスターなおもむきがあり力強い。仔牛を崇拝するといえば、モーセシナイ山ヤハウェより十戒を賜っているとき、麓に残された人々が金の仔牛の偶像を造って崇めていたというエピソードを思い出す。西洋における「仔牛」の象徴する意味は、未熟であり愚行。
★エリ・ロタール「食肉処理場」

屍肉の愉快な行列、もしくは葬列。フレデリック・ワイズマンの映画「肉」を思い出す。
★ヴィクトル・ブローネル「アレクサンドリアのヘロン」

ブローネルは「パラディスト、あるいはパラディストの主題によるコンポジション」も良かった。横顔ばかりを描き出す、平面的な人物の捉え方は古代エジプトの壁画を思い出させる。
ブラッサイ「探偵小説のために」

写真は三連作のうちのひとつ。このあとの作品では人が増えて塀を乗り越えたりもしてます。探偵小説という言葉が使われてるとなんだか反応してしまう。
ジョアン・ミロ「女」

写真はポンピドゥー・センターでの展示のされ方。ポンピドゥー・センターかっこいい。鉄々しい。行ってみたい。写真をよく見れば分かるけど胴体部分に大きな切れ込みが入っている。作品の題名通り、まさに女。