恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

コメディ・エクソシズム。

ラスト・エクソシズム」を観ました。チネチッタ川崎で。ずぶ濡れのまま。

正直なところ悪魔祓いはもういいよってなもんで、悪魔に取り憑かれるのはいつだって少女だし、そんで少女の首がグキバキねじ曲がったり、体操選手ばりのあり得ない体勢を取ったり、歯茎むきだしで叫んだり、ラテン語でいきなり語り出したり、無駄に暗闇の中でひとり佇んでみたり、いつもと同じパターンなんだろと思ったらやっぱりそうでした。
今回のエクソシスト映画はモキュメンタリー方式。そして悪魔祓いを行うのは不良牧師。実際に福音派の牧師ではあるが金儲けのことで頭いっぱいのなまぐさ牧師。
そういえばアメリカ南部のロデオ大会でブラックジョークを平気な顔で飛ばしてたカザフスタン人のボラットですら、福音派の会合では冗談のひとつも繰り出せないまま、もみくちゃにされて為すがままに洗礼を受けざるをえなかったほど、いま地球上で迂闊なことが言えない相手がまさに福音派。あとアップル信者とかBOØWY信者とか。
ラスト・エクソシズム」に出てくる、なまぐさの福音派牧師は宣言する。説教の中にバナナケーキのレシピを織り交ぜたところで、信者はどうせ説教の中身なんか聞いてないし、要は陶酔したいだけなので最後にハレルヤさえ言っておけばいいんだと。そして宣言通りに実行し、アホな信徒どもはバナナケーキの作り方で熱狂する。
この牧師が手がける悪魔祓いも実にいい加減なもので、十字架から煙の出る細工を施したり、悪魔のうめき声っぽく聞こえる音をボイスレコーダーで流したり、壁に掛かってる絵画を糸で動かしてポルターガイスト現象を起こしてみたりで、人為的に悪魔の存在を演出するのみ。
要するにこの映画は、エクソシスムや今までのエクソシスト映画の確信犯的なパロディであり、もしかしてホラーではなくコメディ映画なのかなという思いが頭をよぎったりもする。
ところがどっこい、さぁさぁお立ち会い、本当に悪魔はいたのだ、デービールーッ! さぁ、どうするどうなる!

とはいえ悪魔がご丁寧なことに自らカメラを回してくれて、律儀なまでに自らの凶行を撮影してくれたりするシークエンスなんぞは、怖がらせるのではなくやはりコメディとしての機能で笑わせにかかってるようにしか思えない。悪魔のくせにカメラの使い方、ホラーのツボを押さえてて達者すぎるだろが。
もし現代の日本において、横溝正史的に因習の残る村を舞台にして凄惨な事件を描こうとしても説得力は得られず、どうしてもやりたいのであれば仲間由紀恵の出てたドラマ「TRICK」のように、パロディとしておちゃらけお茶を濁すしかない。
この日本の感覚と似たようなもので、もしかしてアメリカでも南部の秘密めいた儀式というシチュエーションは、リアリティをもはや持ち得ていないのではと思ったりもする。そのため、こんなにもパロディかつコメディ調の作風にしかなり得なかったわけで、だからこその“ラスト”エクソシズムなのかなと思いました。
「ホラー映画」として観てしまうと、評価を決定的に誤るような気が。
作品の設定上、回してるカメラは1台だけのはずが、その映像はカメラが2台無ければ撮れんだろうよっていうのもあるけど、コメディなのだからこれでいいのだと思いたい。