恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

チープ

探偵はBARにいる」を観た。109シネマズは港北で。

109シネマズ港北は、横浜市営地下鉄のセンター南という駅の近くにある。
このシネコン、今どき珍しく3D設備がない。隣駅のセンター北にあるワーナー・マイカルは導入しているというのに。どうもこのへんの人たちはみんなワーナー・マイカルに流れてるらしく、109港北は異常に閑散としていて驚いた。
閑散というと褒めすぎかもしれない。
要するに私ひとりだった。
ポップコーンなどの売店は閉まっていた。パンフの売店には男性のスタッフがひとり。そしてモギリの女性スタッフがひとり。
私はいつも通りロビーで本を読みながら入場開始を待っていたのだが、どうにも落ち着かない。
客が私だけだから劇場スタッフたちの注意は私にだけ注がれている。自意識過剰などという野暮なものではない。
私がちょっとストレッチしようと体を動かすと、だらーっとしていたスタッフたちが急に姿勢を正す様子が目の端に入る。
私の一挙手一投足にスタッフたちは注目しているのだ。非常に落ち着かない。
ほどなく緊張の時間は過ぎ、入場案内のアナウンスが流れる。
客が私ひとりなのだからスピーカーで案内を流す必要などなく、私に耳打ちすればいいのにと思ったりもした。ロビーが狭いので目を凝らさずとも私しかいないのが私でない彼らにはもっと分かりきっいてるはずなのだから。

それはそれとして。
この映画の掛かっていたスクリーンは、うら寂しいシネコンにお似合いの、ミニシアターを思わせるような小さいもので、シネコンのくせに前後の座席との段差があまり無いという、場末感あるものだった。上野にでもありそうなスクリーン。上野の映画館、行ったことないけど。
で、映画の内容も場末に相応しい内容で腹八分に堪能できた。
探偵のBARカウンターにはオセロが常に置いてあり、酒を飲むときは胃腸の薬が用意される。チープな物語に見合った小道具が配置されており、マイセンの器でかけそばを食べるようなミスマッチは決して起きない。
映画における器も料理も大衆割烹に似つかわしいものばかりで固められており、物語の世界に芯が通っている。ススキノという舞台と大泉洋という役者もチープをさらに彩る。
映像もいいと思う。ススキノの交番が入っているビルの屋上で、大泉と男のやり取りのシーン。えらく狭い屋上なのにクレーンでカメラをさらに上げていく。おお、さらにカメラ上げるのか。と、無闇に感心してしまった。
東映の映画ということで、ラピュタ阿佐ヶ谷で観た東映実録路線を思い出した。これぐらいの軽くてチープな作品を1か月に1回観られると人生が豊かになっていいなと思う。東映がんばれ。
東映とゆかりの深い俳優陣が、脇役やチョイ役を固めたりする遊び心があれば、もっとおもしろかったのにと思う。中田博久とか中田博久とか中田博久とか。まぁ、ゆかりの深い俳優たちの多くはジジイなので難しいんだけれども。