恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

【2020年1月23日:追記】『童貞。をプロデュース』について

【2020年1月23日:追記】
童貞。をプロデュース』の主演の方が性行為の強要やパワハラなどの様々な被害に遭い続けていることを受け、当感想の冒頭に2020年現在の所感を追記いたします。
getnews.jp
私は感想の中で、「プロデュースという名の下でやりたい放題、おせっかいだらけな映画」と述べ、主演の方に対し「女優さんにチンコを触られて、苦悶の表情を浮かべ、挙げ句の果てに不機嫌そうで憤懣やるかたない表情をしていたのが印象的」と述べています。
つまり、監督が出演者を勝手に振り回してることや、出演者がイヤイヤ撮影に応じていることに、私はしっかり気づいていながらも、バラエティ番組のリアクション芸的なものとして、この映画を軽く受け止めてきました。
そのような無神経な鈍感さでもって漫然と享受してしまったことを、私自身は強く恥じております。そして、上から目線で説教するようなタイトルまで付けて、不躾な感想を書いたことを、今となってはとても後悔しております。
とはいえ、この感想を消したり、修正したりするのは不誠実であると考え、自戒のためにも記事はそのまま残しておきます。
松江哲明監督の映画についていえば、『あんにょん由美香』『ライブテープ』『トーキョードリフター』『フラッシュバックメモリーズ 3D』を鑑賞しており、どの作品も非常に気に入っています。特に『フラッシュバック~』に関して言えば、3Dで作る意味がここまで強い映画は世界中でも類が無いのではと考えており、まごう方なき傑作と思っています。
だからこそ、ファンとしては今回のことで裏切られた気分にもなるし、被害に遭われた方の気持ちを更に踏みにじるような見解文を出した松江監督に対しては、憤りと残念すぎる気持ちでいっぱいです。
note.com
松江監督の作品を愛してきたひとりとして、一日でも早く、被害に遭われた方への誠実で真摯な謝罪をすることを監督には望むばかりです。



タイトル「チンコ触られて不機嫌な顔をするのは失礼。」

画像はあまり関係ありません。
夜の池袋、トキワ通りを歩いていたら、世紀末の言葉が似合うほどに立派な体格の男が近寄ってきて、わたしの耳元で囁きます。「どう。本番。どう。本番。どう。本番。どう。本番。どう。本番。どう。本番。どう。本番。どう。本番」。一定の抑揚で念仏のごとくループに唱え続られれば、そんな気は全然なくても、悶々としてくるから不思議ですが、今日はシネマ・ロサで映画を観るために池袋へ来たわけなので、後ろチンコをひかれつつ、やっと観ましたよ、「童貞。をプロデュース」。
女性観の歪んでいる童貞さんをAVの撮影現場に連れて行ったり、プロデュースという名の下でやりたい放題、おせっかいだらけな映画だったので、すごくよかった。タイトルにある、童貞。の後ろの句点は、モーニング娘。の後ろにある句点を意識してるんだろうか。
ともかく。童貞さんがAVの現場で、チンコをなかなか出せずにいると、AV監督のカンパニー松尾と、この映画の監督・松江哲明が、そろってパンツを脱ぎ脱ぎ、チンコを放り出す姿には、男気を感じました。そういえば、中野で観た「making of LOVE」の中で高橋ヨシキが、「バーホーベンは女優をハダカにするために、まず自らが全裸になった」という逸話をしゃべっていたことを思い出した。洋の東西を問わず、ハダカがハダカを加速させるのだ。
その後、チンコを出した童貞さん、女優さんにチンコを触られて、苦悶の表情を浮かべ、挙げ句の果てに不機嫌そうで憤懣やるかたない表情をしていたのが印象的でした。童貞という存在は、かくも裏筋舐め、ではなくて、一筋縄ではいかないものなのだ。うんうん、わかる。
で、そのあとカンパニー松尾の吐く言葉が、けだし名言。男優としてうまく振る舞えなかった童貞さんが「すいません」と謝ると、監督さんは「人間関係ってのは迷惑かけるものなんだよ。迷惑かけて当たり前」といった言葉を童貞さんに放つ。すると童貞さん、心打たれたのか、思わず監督さんに握手を求めてしまう。感動しました。監督さんの言葉もそうだし、童貞さんの殊勝な態度にも胸を打たれました。
でもね。その後、童貞さんはカメラを持って好きな女性に告白するんだけど、どうも童貞さん、うまくいったらしいんだな、これが。なんかむかつく。あぁ、むかつく。あと、シネマ・ロサには結構お客さんが入ってて、カップルなんかもいたんだけど、カップルが童貞さんの一言一句でクスクス笑ってるのを聞いたときも、なんかむかついた。いや、おれも同じように笑ったけどさ。カップルが笑うのとおれが笑うのでは、月とスッポンぐらい違うわけ。もちろんおれがスッポン。スッポンってチンコな意味も持たせられるけど、マンコな意味も持たせられるから、便利な動物だなって思う。
ところで。峯田和伸が童貞さんの作った歌を、アーケードな商店街の下だろうか、朗々とギターで歌い上げてるシーンがある。長回し。おっと、これは同じ監督の「ライブテープ」っぽい雰囲気もあるぞ。そして、童プロ2のビューティフル・ドリーマーに出てくる童貞さんは、崇敬するアイドルに捧げた映画を撮ったりしてる。この童貞さんの姿って、「あんにょん由美香」での松江哲明の姿に通じるものがあるぞ。
なるほど、作品っていうのは、その単体だけで存在するにあらず、つながっていくものなんだな。しみじみ思いました。チンコがつながるようにね。