恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

『ヒックとドラゴン』、この物語で感動するには蛮勇が必要。


ヒックとドラゴン』を観た。109シネマズ川崎の3Dで。
同じ109川崎で『エアベンダー』の3Dを観たとき、確かXpanD方式だったんだけど、今回のヒッドラではマスターイメージ3D方式になってた。よって、初マスターイメージ3D体験。よかったです。RealD方式といっしょで、サングラスが実に軽い。この勢いでXpanDは駆逐されればいいと思う。新宿の3D映画館たちもマスターイメージ3Dにはやく乗り換えるといいよ。
で、ドラゴンを操るヒックが空中を縦横無尽に飛び回る映像がひたすら炸裂。興奮した。
ヒックの乗るドラゴンは、飛ぶために必要な尾翼が半分ちぎれている。そのためヒックはドラゴンのために人工の尾翼を作り、バイクのギアチェンジみたく、足でドラゴンの尾翼を操作し、動きを調整する。そうすることでドラゴンは以前のように大空を巡ることができる。よってヒックはドラゴンにただまたがっているわけではない。ヒックとドラゴン、この両者はしっかりと両輪になってお互いを助け合う。そうやって物語を駆動させていくわけで、ドラゴンを操縦するというアイデアはとても秀逸。そして、空中飛行の映像に関しては言うことないぐらい素晴らしかった。
でもね、この物語にはどうにも乗り切れませんでした。
ヒックとドラゴン』をすごく悪いように約すと、圧政に苦しむものたちを解放してあげて、自分たちの支配下に置くって話なわけです。
この映画の最後に描かれているのは、共存共栄だとか助け合いだとか、そういう美しい言葉で語れるものではないと思うのだ。もし美しく語るのであれば、ユーモアあふれる無邪気な例えだとしても、「ペット」なんて言葉は使わないと思う。もっともわたしは吹き替え版で観たので、原語では「ペット」なる乱暴な物言いをしてないかもしれないけど。
冒頭でヒックたちバイキングが羊を飼っているシーンが観られる。結局はそれと同じなんだよな。ドラゴンを飼い慣らしたわけで、要するにドラゴンは家畜と同等。なので、いい子供ならともかく、いい大人がこの物語に触れて、無邪気に感動していいものかどうか疑問です。感動しようとしたら相当な蛮勇が必要になりそう。もしくは優等生な「いい」大人だからこそ、こういう物語でも素直に感動できるのかも。不幸なことに、わたしは不良な「わるい」大人なものですから、ドラゴンを皆殺しにする物語のほうが感動するっていうか、血が沸き立つかな。本当に美しいお話であれば、親玉のでっかい凶暴なドラゴンともヒックは心を通わせなきゃね。最後の最後まで、それを期待してしまったわたしが甘かったんだけど。それにしても、敵との関係の描き方が、アメリカは巧妙になってきたなと思う。皮肉ではなく心底から感心する。やっぱアメリカ映画からは目が離せない。
ともかく映像は申し分なかった。マイケル・ベイ的な爆発を背景にヒロインが颯爽と歩くシーンなんてゾクゾクしたよ。

物語に散々ケチをつけてはみたけど、ヒックに代償を払わせたのは素晴らしい。尾翼を半分失ったドラゴンと、ヒックの外見を相似させたシナリオには、非常に納得。