恥とマスは掻き捨てナマステ

ヨーグルトが好きです。アートと映画と音楽と野球は、もっと好きなようです。

アルチンボルドになっちゃーうよ〜


もちろんタイトルの元ネタは、アデランスのアルシンドによるCM。芸術的素養に欠けすぎて、こんなタイトルしか思い浮かばない自分を呪うばかりです。

というわけで、6月30日の金曜日に上野の国立西洋美術館でやってるアルチンボルド展に行ってきました。国立西洋美術館は、7月から9月の毎週金曜・土曜と毎月のプレミアムフライデーに限り21時まで開館しています。遅めに行くと空いてていいですよ。
アルチンボルドといえば、花やら野菜やら魚やら獣やらで構成して人物を描いた寄せ絵が有名です。私は、エッシャーマグリット的な騙し絵が子どものころから好きだったので、アルチンボルドの寄せ絵もずっと気になっていました。そして、今回とうとう本邦初の本格的な展覧会ということもあり、最大級の楽しみにして待ってました。

入場してすぐ、アルチンボルド最晩年の傑作「四季」がお出迎え。

この作品は、後で出てくる四季シリーズのいわばベスト盤といった趣きのある集大成的な作品です。なので、すべてを見終わった後にもう一度この場所に戻ってきて、まじまじと鑑賞することをオススメします。老境の域に達してもなお枯れることのなかったアルチンボルドの筆致が、しみじみと迫ってきます。

そのほか、感じたことを箇条書きにて。

  • “紙”による寄せ絵で描いた自画像は、アルチンボルドが手がけてきた寄せ絵に対する自負がうかがえて感服するのみ。
  • レオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチが唐突に展示されてて驚愕。うれしい不意打ち。
  • アルチンボルドが仕えた宮廷の宝物が美しくひたすら眼福。水晶製の平皿を見て、これで素麺を食べてみたいなっていう極めて小市民的な感想を抱く。
  • 今回の目玉、四季シリーズと四大元素シリーズ。「春」の鮮やかさ、「夏」の豊潤さ、「冬」の枯淡さ、「大地」と「水」の奇々怪々さ。どれだって幾らでも見ていられるし、見るたびに新たな発見が得られる。美術鑑賞の楽しさを存分に得られること請け合い。しかし、このエリアには、アルチンボルドその人の手によるものかどうか怪しい作品もあって、素人目に見ても明らかにタッチが雑なのが丸わかり。伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」みたいなもので、こういう出来が悪いのは無理に揃えなくてもいいかなと思います。
  • アルチンボルドの絵画の量だけでは展覧会スペースが保たないため、そのほか色んな作家の展示物が飾られてて面白かった。南ドイツの画家が描いた多毛症の子どもの肖像画は所在なげな感じが息抜きとして一服の清涼。
  • アルチンボルドを真似た寄せ絵のクオリティの低さに唖然。流行りの表現を使うなら、ジェネリックアルチンボルドというべきか。これらの程度の低い作品を見て、よりアルチンボルドの偉業っぷりが目に染みます。
  • 男根ペニスの寄せ絵で作られた人物画の絵皿。女性がいっぱい群がってて大人気でした。大人のオモチャ屋さんでは、女性の方が積極的に品定めするのに対し、男性のほうが及び腰という話を思い出しました。
  • 野菜で構成した寄せ絵の「庭師」、獣肉で構成した寄せ絵の「コック」。現代においても通用しまくる愉悦至極なカリカチュアの鋭さ。
  • 展示が終わってエスカレーターに乗ってしまうと会場から強制退出されますが、当日に限りチケットでもう一度入場できるのでご心配なく。ぜひ、再度ゆっくりとアルチンボルドの世界を満喫しましょう。

最近の展覧会は、SNSによる拡散を狙って、カメラ撮影オッケーの展示スペースを設けてるところが常ですが、この展覧会にはありません。が、その代わりに、アルチンボルドメーカーなるマシーンを入口に設置してあります。カメラの前に立つと、自分の姿をアルチン風の寄せ絵にしてくれるという優れもの。で、実際にやってみた最初の結果がこちら。

おかっぱロン毛の、ちびまる子ちゃんに出てくる野口さんスタイルになりました。おかっぱでもロン毛でも無いのになぜ……。

後でリベンジしたのがこちら。

これは雰囲気が出てます。本人はもっとソリッドだけどね!

とっても充実してる展覧会でした。アルチンボルドの展覧会なんて、この先、未来永劫にわたって日本で開催されない可能性あるので、行くならナウですよ。

というわけで、この夏はアルチンボルドになっちゃえばいいじゃん!